一生歩ける足を作る「和柔流・ひざ挙げ握り支え歩行」
「正しい歩き方」を教わったことがありますか?
多くの方は、背筋を伸ばし、大股で踵から着地する「モデルのような歩き方」が理想だと思い込んでいます。しかし、その歩き方が実はあなたの膝や股関節を蝕んでいるとしたら……。
和柔流が提唱するのは、格好良さの追求ではなく、物理学的に「衝撃を最小限に抑え、機能を最大化する」歩行法です。
1. モデル歩きと歩荷(ぼっか)歩き:あなたはどちらを選びますか?
【モデル歩き】(舗装路・見栄え重視)

歩幅を広く取り、踵から力強く着地する。一見、颯爽として見えますが、これは平坦な道限定の歩き方です。足首や膝には常に大きな「衝突エネルギー」が加わり、階段や凸凹道では通用しません。
【歩荷(ぼっか)歩き】(実戦・機能重視)

一方で、重い荷物を背負って険しい山を登る「歩荷さん」の姿をイメージしてください。彼らは、重たい荷物を微動だにさせず、一本の軸を通したまま静かに歩きます。
坂道でも段差でも、常に「支え脚」に重心を乗せ、頭から足裏まで一直線の「重心軸」を保つ。これこそが、関節に負担をかけない究極の合理的歩行です。
2. 物理学で読み解く「衝撃の正体」:F=m・a の法則
なぜ、和柔流の歩き方は痛みを消すのか? その答えは物理学の方程式 F=m・a にあります。
- F(衝撃):あなたの関節を襲うダメージ。
- m(質量):あなたの体重。
- a(加速度):着地時の「急停止」や「ブレ」の激しさ。

膝の痛みを感じる時、私たちの体には巨大な F(衝撃)が加わっています。体重(m)をすぐに変えることはできませんが、着地の瞬間に「ドスン」と止まるのではなく、和柔流の所作で a(加速度) を最小限にコントロールすれば、衝撃 F は劇的に小さくなります。

モデル歩きのように踵から力強く着地するのは、物理的に言えば「時速40kmで壁に激突する車」と同じ。和柔流の歩き方は、「ゆっくりと時間をかけて軟着陸する飛行機」のように、関節を守るのです。
3. 直立二足歩行の命は「ブレない支え脚」
歩行の第一歩は「脚を前に出すこと」だと思われがちですが、それは間違いです。
第一歩の前に、まず「支え脚」で体を完全に安定させること。 これが先決です。
階段を上る時を思い出してください。
- 支え:支え脚でしっかりと地面を捉える。
- 膝挙げ:もう一方の膝を挙げて段に乗せる。
- 置く:挙げた位置に、音を立てずに足を置く。
この「支え ⇒ 膝挙げ ⇒ 置く」の繰り返しこそが、重力と仲良くなるための唯一の作法。坂道や階段の下りでも、この支え脚の粘りがあるからこそ、踏み出す足が「軟着陸」し、膝への衝撃を逃がすことができるのです。
4. 足指の「握り」が天然のサスペンションを起動する
現代人の多くは、靴の中で足指の存在を忘れ、「足板」のような感覚で歩いています。これは機能の退化です。
和柔流では、地面を「蹴る」のではなく「握る」ことを強調します。
足の指で地面をグッと握ると、足裏の筋膜が巻き上げられ、土踏まずのアーチがバネのように持ち上がります。これを「ウインドラスの巻き上げ機構」と呼びます。

この機構が働けば、意識して地面を蹴らなくても、前方に重心を移動するだけで体は自動的にスムーズに送り出されます。必要なのは「蹴る力」ではなく、「地面を握り、アーチを機能させること」なのです。


5. 上半身の役割:重たい頭を「静」に保つ
歩荷さんの写真をもう一度見てください。彼らは腕を前で組み、荷物をガッチリ固定しています。もしここで腕を大きく振れば、重心が左右にブレ、一歩も進めなくなるでしょう。
正しい腕の使い方は、重たい頭(約5kg)を揺らさないためのバランス調整です。
肘を軽く曲げ、肩甲骨を後ろに引くように動かす。腕を振るのではなく、「肩甲骨で体幹の軸を安定させる」。これが、横ブレを防ぎ、膝へのねじれ負荷をカットする上半身の極意です。
結論:和柔流「イメージ三ヵ条」で歩きを変える
今日から、歩くときはこの三つのイメージを意識してください。
- 基本歩行イメージ:支持脚で支え、踏み出し脚の膝を挙げ、その位置にそっと置く。
- 片脚立ちイメージ:足指で地面を握り、お尻を締め、背筋を一線に通す。
- 腕振りイメージ:頭を固定し、肘を曲げ、肩甲骨を後ろに小さく引く。
坂道でも階段でも、この物理学に基づいた所作を守れば、あなたの足は「消耗品」から「一生モノの特効薬」へと変わります。さあ、一緒に「一生、歩ける旅」へ出かけましょう。
