〜複雑な筋肉の「連携プレー」を紐解く【ひざ痛総論】〜
膝が痛いと、どうしても「膝の関節そのもの」に原因があると思いがちです。軟骨がすり減った、骨が変形した、水が溜まった…。 もちろんそれも事実かもしれませんが、多くの場合、それは**「結果」であって「根本原因」**ではありません。
和柔整体(WAJU)では、慢性的な膝の痛みは、膝だけでなく**「股関節ーひざ関節ー足関節」**という下半身の3つの関節の連動性が崩れた結果だと考えています。
今回は、なぜ膝に負担がかかってしまうのか?そのメカニズムを、少し専門的な「筋肉の働き方」の視点から、分かりやすいイラストを交えて解説します。これが膝痛解消への第一歩となる「総論」です。
第1章:筋肉の「2つの顔」を知ろう
筋肉はただ「縮む」だけではありません。状況に応じて働き方を変えています。大きく分けて2つのパターンがあります。
1. じっと耐えて「支える」働き(等尺性収縮)
筋肉の長さは変わらないけれど、力が入っている状態です。 例えば、重い荷物をじっと持っている時や、中腰で静止している時がこれに当たります。
【イラスト図解1:筋肉の「支える」モード】

空気椅子の姿勢でプルプルと震えながら耐えている。
この「支える」働きは、関節を安定させるのに非常に重要ですが、筋肉が酸欠になりやすく疲労がたまりやすいのが特徴です。長時間座りっぱなしの姿勢も、実は腰やお腹の筋肉がこの「支える」働きを強いられているため、意外と疲れるのです。
2. 伸び縮みして「動かす」働き(等張性収縮)
筋肉が伸びたり縮んだりしながら力を発揮する状態です。いわゆる普通の「運動」です。
- 縮みながらパワーを出す(求心性収縮): エンジンのような働き。
- 伸びながらブレーキをかける(遠心性収縮): 実はこれが膝痛にとって非常に重要です!
【 イラスト図解2:筋肉の「動かす」モード(ブレーキ役の重要性)】
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着地しようとする前足の太もも前の筋肉(大腿四頭筋)が、体重の衝撃を受け止めるために、ビヨーンとゴムが伸びるように引っ張られながらも耐えている
この「伸びながら耐える(ブレーキ役)」の働きがうまくいかないと、着地の衝撃が関節に直接ガン!と来てしまい、膝を痛める大きな原因になります。
第2章:膝痛の鍵を握る「二関節筋」の複雑な連携
膝の動きをさらに複雑にしているのが、**「二関節筋(にかんせつきん)」**という種類の筋肉の存在です。
- 単関節筋(たんかんせつきん): 1つの関節だけをまたぐ筋肉。主な役割は「関節を支える」こと。(例:お尻の大臀筋など)
- 二関節筋(にかんせつきん): 2つの関節を同時にまたぐ筋肉。ダイナミックな動きを生み出すが、調整が難しい。(例:太ももの表裏の筋肉)
膝周辺には、この厄介な「二関節筋」が主役として鎮座しています。
【イラスト図解3:「単関節筋」と「二関節筋」の違い】

左側は「単関節筋」:お尻から股関節だけを「シンプルに支える!」
右側は「二関節筋」:骨盤からスタートし、股関節と膝関節の両方をまたいで膝下にくっつく長い筋肉(ハムストリングや大腿四頭筋)。2つの関節を同時に操る!調整が難しい!」
「しゃがみ込み」動作で見る複雑な連携
例えば、深くしゃがみ込んでから立ち上がる動作を想像してください。
- しゃがんで静止(空気椅子状態): 全ての筋肉が「支える」モードでプルプル耐えています。
- 立ち上がる時:
- お尻の筋肉(単関節筋)が「要(かなめ)」となって強力に支えます。
- 太もも裏の筋肉(二関節筋)が縮んで股関節を伸ばします。
- 同時に、太もも前の筋肉(二関節筋)は、膝を伸ばすために働きます。
このように、1つの動作の中で、あっちの筋肉は縮み、こっちの筋肉は伸びながら支え、さらに2つの関節を同時にコントロールする…という、非常に複雑な**「連携プレー」**が瞬時に行われているのです。
まとめ:膝の痛みは「連携ミス」から生まれる
膝関節は、単純な蝶番(ちょうつがい)のように見えて、実は体の中で最も複雑な筋肉のコントロールを必要とする関節の一つです。
- 長時間の姿勢で筋肉が凝り固まる。
- 運動不足で特定の筋肉が弱くなる。
こうした理由で、筋肉の「支える力」や「伸び縮みのタイミング」が狂ってしまうと、スムーズな連携プレーができなくなります。これを**ミスアライメント(配列の乱れ)**と呼びます。
この連携ミスが続いた結果、半月板や軟骨に無理な負担がかかり続け、やがて損傷や変形、そして痛みへとつながるのです。
すり減った軟骨や傷んだ半月板は「結果」です。 手術で形を整えても、痛みの根本原因である「筋肉の連携ミス(体の使い方)」を改善しなければ、また同じ負担がかかり続けてしまいます。
和柔整体では、膝だけでなく、骨盤、股関節、足首を含めた全身のバランスを整え、この複雑な筋肉の連携を正常に戻すためのお手伝いをします。
次回の「各論」からは、具体的な症状(O脚、階段の下りが痛いなど)における連携ミスのパターンを解説していきます。



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