*横隔膜*~意識と無意識の架け橋~
横隔膜は迷走神経と共に”心身を回復させる鍵”
肺という臓器は、それ自体で膨らむことはできません。胸や背中の周りにある「呼吸筋群」が肋骨を動かし、風船のように肺を広げることで初めて空気を取り込んでいます。この呼吸のオーケストラにおいて、主役を担うのは**『肋間筋』と『横隔膜』**です。
1. 横隔膜は安息呼吸の主動:「活動の肋間筋」と「安息の横隔膜」
私たちの呼吸は、状況に応じて二つの筋肉が使い分けられています。
- 肋間筋(運動時の呼吸): 肋骨の間を走るこの筋肉は、肋間神経(運動神経)と**交感神経(自律神経)**の二重支配を受けています。主に多くの酸素を必要とする運動時に稼働し、意識的にも無意識的にも動くことができます。

- 横隔膜(安息・睡眠時の呼吸): 一方で横隔膜は、頸椎からの横隔神経(運動神経)と、副交感神経の代表格である**『迷走神経』**の支配を受けています。特にリラックスしている時や、睡眠時の呼吸は、この横隔膜が主役となります。

2. 意識が無意識を書き換える「スイッチヒッター」の役割
横隔膜の最大の特徴は、「自律神経(無意識)」の支配下にありながら、「運動神経(意識)」によってもコントロールできるという点にあります。これこそが、横隔膜が「心身の架け橋」と呼ばれる理由です。
例えば、予期せぬ事故や不安に直面したとき、心臓はバクバクと高鳴り(交感神経の暴走)、呼吸は浅く速くなります。心臓を直接自分の意思で止めることはできません。しかし、横隔膜を介した「意識的な深い呼吸」を行うことで、状況は一変します。
意識的に横隔膜を深く動かすことは、迷走神経を通じて脳へ「今は安全だ」という信号を送ることに他なりません。これがリラックスモードへのスイッチとなり、興奮した交感神経を鎮め、心臓の鼓動や錯綜した感情をアジャスト(調整)していくのです。瞑想やマインドフルネスの本質的な原理も、ここにあります。
3. 生命維持の根幹「迷走神経」のマルチ機能
横隔膜の動きを司る「迷走神経」は、まさに生命のライフラインです。
- 広大なネットワーク: 第Ⅹ脳神経として頭蓋底から発し、脊髄を通らずに直接、肺、心臓、そして横隔膜の穴(食道裂孔)を抜けて、胃、肝臓、膵臓、腸にまで神経枝を広げています。

- 情報の双方向性: 各臓器へ指令を送るだけでなく、内臓の不具合(内臓感覚)を脳へ逐一知らせる「内臓求心性繊維」を備えています。

- 調整の達人: 胸部では心拍を安定させ、腹部では胃腸の蠕動(ぜんどう)運動を促します。

単なる末梢神経ではなく、生きていく上で最も重要な**「生命維持神経」**と言えるでしょう。
4. WAJUの視点:横隔膜から「気」を活性化する
私、WAJUは考えます。 「副交感神経の親玉である迷走神経に、外部から意図的にアプローチする方法はないか?」 その答えこそが、**意識と無意識の交差点である「横隔膜」**です。

横隔膜というスイッチヒッターを調整することで、迷走神経を介して心臓の循環系、消化器系、代謝系の肝臓までをも活性化できる。私は、漢方でいう**『気』の正体の一部は、この迷走神経の働きにある**と確信しています。西洋医学的に『気』を表現するならば、それは迷走神経を介した生命エネルギーの循環なのです。
臨床現場での成果:WAJU整体「横隔膜ー呼気流術」
WAJU整体では、この理論に基づき「横隔膜をアジャストする手技法」を確立しています。横隔膜から迷走神経を介して各臓器へアプローチすることで、以下のような多岐にわたる不調に成果を上げてきました。
- 逆流性食道炎や便秘などの胃腸の不具合
- 慢性的肝臓疲労からくる背部痛・肩腕の痛みや痺れ
- 内臓の蠕動運動低下に起因する腰痛
- 自律神経の乱れ(いわゆる自律神経失調症)
横隔膜を緩め、整えることは、単なる呼吸の改善に留まりません。それは、あなたの中に眠る「心身を回復させる力」を呼び覚ます、最も合理的でパワフルな手法なのです。



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