スロープや階段の下りで痛む膝
膝を痛めると階段を上るより下るほうが辛い、
と感じておられる方のほうが多いのではないでしょうか。
それは何故?
それは膝に掛かる体重の衝撃的負荷ショックが
上るより下るほうが大きいからです。
そして、これもまた軟骨や半月板の問題ではなく
筋肉の拮抗、協調作用のアンバランスが原因で
痛みを発生させているのです。
では、
その筋肉が起すミスアライメントの’絡繰り’を観てみましょう。
下りで痛む膝-絡繰り-(痛みのメカニズム)
下り坂で送る(前に出す)脚は、
伸展した状態で地面に着地します。
地面からの突き上げる衝撃を
足裏を地面に向き合うように
足関節を合わせること
(⇒ショックアブソーバー『その2』)
と、
膝関節の屈曲
(⇒ショックアブソーバー『その1』)で
衝撃を吸収するように構成されています。
このショックアブソーバーの主役は
やはり筋肉です
この筋肉に不具合が起こることが
痛みの原因です。
それを考察してみましょう。
ショックアブソーバー『その1』
膝関節の屈曲機能
膝を屈曲させる筋肉は
’太もも後ろ’のハムストリング筋です
1つの単関節筋(大腿二頭筋-短頭-)と
3つの二関節筋
(大腿二頭筋-長頭-・半腱様筋・半膜様筋)
で構成されています。
この大腿二頭筋-短頭-が
トラブルメーカーになります。
その絡繰りを解剖学観点に立ち
観察してみましょう。
観察図1-膝関節を曲げる筋肉⇒ハムストリング筋ー
1~4をハムストリング筋といいます
外側に1大腿二頭筋-長頭-
2大腿二頭筋-短頭-があります
内側に3半腱様筋
4半膜様筋があります
その機能は
2以外は『二関節筋』で股関節を後ろに引く
と同時に膝関節を屈曲させます。
2大腿二頭筋-短頭-は
『単関節筋』で、
膝関節の屈曲のみ機能します
そして、
-短頭-と呼ばれるだけに
他の3つより”短く小さい”筋肉です
ここに落とし穴が有ります!
観察を続けましょう。
:*: 単関節筋・二関節筋の解説は
⇒変形性ひざ関節痛の問題-総論-をご参照ください
:*: 上図5は⇒縫工筋 6は薄筋です
観察図2 大腿二頭筋長頭・短頭
=外側のハムストリング筋
2大腿二頭筋-短頭-は、
1大腿二頭筋-長頭-の半分以下の長さと体積しかありません
それだけに衝撃負荷の負担は大きく
蓄積疲労も多くなります。
故に
傷みやすく、機能障害も起こりやすい
トラブルメーカーとなり得る筋肉です
次は、大腿二頭筋ー長頭ー短頭ーの
腱の付着部を着目してみましょう
観察図3 膝窩の筋-付着部-
ハムストリングス筋の膝関節に於ける付着部は
A.とB.に振り分けられます。
A.脛骨粗面-内側-
(=鶩足(がそく)部とも呼ばれます
⇒アヒルの足の様に見えるので命名)
ここに
内側ハムストリング筋(3半腱様筋・4半膜様筋)
が付着します。
加えて5縫工筋・6薄筋も鶩足部に付着します。
B.腓骨頭
外側ハムストリング筋(大腿二頭筋-長頭-短頭-)
が付着します。
ここでの観察視点は
⇒膝-内側部に手厚く、膝-外側部は手薄だ
という所で、
これが問題点です。
結果、
膝関節は下腿骨が内旋の
捻れくるいを起してしまいます。
ショックアブソーバー『その1』のまとめ
スロープの下りや
階段の下りで送る(前に出す)脚は、
足裏からの衝撃を
膝の屈曲で吸収します。
その衝撃を受けて
ショックを吸収する筋肉は
’太もも後ろ’の
ハムストリング筋と前述しました。
繰り返しますが、
問題点は、
内側に手厚く、外側は手薄だ、
というポイントです。
そして、
2大腿二頭筋-短頭-は短く、貧弱です!
ということは
2-短頭-にかかる負担は、
他よりも大きくなります。
必然的に疲労の蓄積も多くなります
そうなれば
筋肉は縮んでしまい(筋萎縮)
内側部と外側部の
膝関節-屈曲-作用のバランスが崩れます
下腿骨は
内旋の歪みを起してしまいます
(⇒下図参照:下腿骨が”→方向”に捻れる)
当然、ショック吸収力も低下し、
下りの突き上げで痛みが発生します!
『その1』の結論として
大腿二頭筋-短頭-の”筋機能低下”が
トラブルメーカーとなります。
この大腿二頭筋-短頭-は
治り難い筋肉であり、
いろいろなトラブルを
誘発する筋肉でもあります。
もう一度、上図をご覧ください
‘7腓骨筋’というマイナーな筋肉があるのですが、
これがまた大腿二頭筋-短頭-の不具合によって
影響を受けて機能低下を起します。
これが次の課題に繋がります。
ショックアブソーバー『その2』
足関節の調整機能
皆さんは足の趾(ゆび)の存在を
お忘れになっておられるか、
軽視しておられるのではないでしょうか。
本来、
裸足や草鞋を履いて歩いていた時代には、
足趾(そくし)で
地面を掴みバランスを取りながら
デコボコ道や浮き石だらけの道を歩いていました。
地面が舗装され、履き物が進化して、
足に掛かる負担が
余りにも軽減されてしまった現代、
元来の足趾機能を著しく劣化させてしまっています。
下り坂や階段の下りで
送る(前に出す)足の指は
小指から地面を握る様に食む様に
接地するのが本当です。
しかし
全くといっても言い過ぎでないぐらい
足趾を使ってない・・・
現代人の小指は小さく小さく
縮んでしまっています。
もっと劣化が進んでいる人は
浮き指状態になってしまっています。
上図-“7腓骨筋”は足関節を外反(足裏を外側に向ける動き)
させる機能を持ちますが、
足の外側アーチを形成し
小指から足趾の握り機能を演出する
という特殊機能をも備えた筋肉です。
○印を観察して頂いて解るように
腓骨筋腱が足底外側まで至り、外アーチを形成しています。
足は26本の骨から構成され、
身体を支えるため
強固な靱帯・筋肉・腱で支持されています。
さらに足底に3つのアーチを構成し
足裏で地面からのいろいろな衝撃を吸収します。
その外側のアーチの主軸になる筋肉が’7腓骨筋’です。
マイナーに思えて、
とてもメジャーな働きをする筋肉だったのです。
『その2』の結論と総まとめ
腓骨筋がショックアブソーバー『その2』の
足裏を地面に向き合うように足関節を合わせる
主要筋であることがご理解頂けたと思います。
ここで観察して頂きたいポイントは
大腿二頭筋-短頭-と腓骨筋の位置関係です。
腓骨頭を中心に上から大腿二頭筋-短頭-が付着し、
下から腓骨筋が付着しています。
外側で1直線上に重力を受ける位置関係にあります。
両方ともショック吸収力の役目を担う単関節筋です。
ということは、
腓骨頭の筋付着部に両方の筋負荷力といいますか
マイナスのエネルギーが集まってきます。
その腓骨頭は膝関節の外側に位置します。
ここに変形性ひざ関節痛の原因の1つになる
ミスアライメントが生じるわけです。
『六十膝』の原因筋である大腿筋膜張筋の不具合も
大腿二頭筋-短頭-と腓骨筋が
絡んでいるのは間違いありません
そして、
単純なストレッチやマッサージでは
いずれも回復し辛い筋肉群です。
ましてや
自己トレーニング的筋トレ&ストレッチでは
治癒させるのは難しいです。
この問題を改善させるには
的確な熟練の施術が必要です
そして、
痩せ衰えた大腿部と下腿部の筋肉を鍛えるには
体幹の深層筋群をも考慮した
筋肉トレーニングが必要です!
和柔整体では
「ぷるタッチ反射術」で的確な施術を行います。
・WAJUの経験に基づいた
「ストレッチ&筋トレ&歩行法」の指導を行います。
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